吃音症経験後記 〜大学1年〜

吃音

入学前

まず、この頃の吃音症の症状を説明しておくと、家族や親しい友達と話す時以外は、言葉がでてこなくて特にあ行から始まる単語が苦手でした。そして、人前での発表や発言では、最初の一言が言いにくく「えーと・えーと」や「えっ、えっと」など、助走的な音を発さなければなりませんでした。また、電話をする時も自分の名前が言えなかったり、途中で途切れ話すことができなくなってしまったりしてました。

高校をなんとか無事に卒業し、理学療法学科がある大学に進学しました。大学の入学式までは1ヶ月ほど春休み的な長期休みがあるので、家でじっとしていたり遊んでばっかりではもったいないと思ったので、バイトをすることにしました。人生初バイトだったので接客業はやめておきました。ちょうど友達がやっていたスーパーの掃除や品出し、値引きシール貼りなどのバイトをしました。レジ打ちはなかったので吃音が大きな影響を与えることはありませんでした。バイトに応募するための電話が心配だったのですが、友達の紹介ということで面接のアポを取るための電話だけで済みました。本当は、友達の紹介で電話しなくていいかなとか軽く希望を持っていました。結局この電話では、吃ることはありませんでしたが、すごく緊張しました。

バイトの面接は、店長と1対1で行ったので、緊張はしましたがあまり吃ることはありませんでした。軽いノリの感じの方で、緊張しないようにしてくれていました。ものすごくありがたかったなと今でも思います。その時は、吃音のことは、申告しないことにしてました。バイトに受かりたいからとかではなく、バイトして行くうちに吃音を治そうと思っていたからです。本当だったらきちんと吃音のことを話して理解を得た上で働いた方が良かったと思いますが、面接でも指摘されることは無かったのでこのようにしました。

スーパーの他にもう1つバイトをしました。それは、ピッキング作業です。これは、コミュニケーションが従業員同士のコミュニケーションしかないと思ったので選びました。これも面接などもうまくいき順調の働くことができました。ピッキングが9〜13時、スーパーが17〜21時という感じで働いていました。

そんな感じで大学入学までの時間を過ごしていました。大学合格とか色々ありポジティブ思考になっていたので、吃音症の症状がちょっとだけ良好になり1対1だと割と普通に話せるようになっていました。

大学1年生

3月も終わりに差し掛かり、いよいよ大学生活が始まろうとしてきた頃、いつものように不安と戦う日々が始まりました。それは、自己紹介です。たかが自己紹介、されど自己紹介、私にとってはとても大きなことです。「言葉に詰まって話せなくなったらどうしよう」 「 吃ってしまったらどうしよう」と考えてしまうと不安で心臓がバクバクしてきておかしくなりそうでした。それと、同時に吃音が出てしまっても、「吃音も含めた『自分』を知ってもらう」というように、今までとは真逆の考え方をするようにしていました。このネガティヴな思考とポジティブな思考を行ったり来たりしながら4月を迎えました。

大学の入学式は、学外のホールみたいな会場で行いました。そのため、式が終わったらすぐに解散という感じでったので、特別、話をしたりなどはありませんでした。周りの人は積極的に友達を作るために話かけている人もいましたが、私は流石に勇気がでず自分から話かけることはできませんでした。

大学といえば、高校みたいにクラスはないイメージで、サークルやゼミしか深い交流はないと思っていたので、友達を作るのは難しいと思っていました。ですが、幸いにも私の大学は理学療法学科が50人と割と少なかったので、クラスみたいな感じでまとまっていました。ですので一般的な大学よりは、過ごしやすかったと私は思います。

授業初日は健康診断とオリエンテーションがありました。そのオリエンテーションで、やはり自己紹介がありました。学生50人と理学療法学科の教員10人くらいの前で自己紹介をすることになりました。それはもう、めちゃめちゃ緊張しました。

今回の自己紹介では、わかりやすく吃ってしまいました。

「えー、えーえっえっーと、えーはじめまして」みたいな感じになってしまいました。

「えー」の前にも他の人にはなかった間が数秒あり、少々空気が変わるのを感じました。最初のはじめましてがでてしまえばその後は割と普通に話すことができたので、名前、出身地、出身校、趣味など簡単な自己紹介はできました。少々変な空気にはなりましたが、無事に終わることができました。 ですが、この時に初めて感じたのが、自分に名前を言おうとすると吃るようになっていたことです。

オリエンテーションも終わり解散しようとした時、担任の教員に声をかけられ、軽く個人面談的なことをしました。流石に医療系の大学だったので、吃音症のことに気づいてくれました。その時に、臨床心理士の先生も一緒に、これまでの吃音のことなど話を聞いてくれました。不思議とこの時はあまり吃ることはありませんでした。

そして、話が終わり今後は、少々配慮をしてくれることになりました。それと同時に今すぐにという訳ではないけれど、病院での治療も進められました。その理由は、実習があるからです。実習先で吃音の治療中ですと説明した方が、理解が得られ易いということと、私自身の負担を軽減させるためです。毎年数人は、心身の不調で実習を中止する学生がいるほど苦しい思いをすることもあるからです。

先生からの話に納得し退出しました。話を聞いてもらえたのと、配慮してもらえることがわかったので、すごく安心してやる気が出てきました。勉強と吃音と両方なんとかしようと思いました。 ですが、その時はとりあえず半年ほどしてから治療を開始しようと考えていました。

そんなこんなで、大学生活がスタートしました。

最初の頃は、初めての先生の授業では自己紹介などがありましたが、気が楽になっていたのもあったのか、吃音が出ることが減っていきました。たまに、授業中に発言する時も割と普通に話すことができていました。また、教員や友達とも普通にコミュニケーションがとれていました。しかし、母音から始まる単語だけは相変わらず吃ることが多かったです。それを除けば、特に不安なことや心配なことはありませんでした。

そのため、この時安易にも治療はしなくていいかもと考えてしまいました。そして、この年は治療はしませんでした。これ判断に後々すごく後悔します。

症状も比較的、軽減されコミュニケーションも普通にとれたので、それなりに友達もでき、楽しく大学生活を過ごすことができました。勉強はものすごく大変でしたが笑

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